78歳になる母は、目が悪い。
子どもの頃の栄養失調が原因だと聞いている。
美容師の母は、可愛らしく身ぎれいにしていて、学校の行事などで母と一緒の時は誇らしい気持ちでいっぱいだった。
今でも、出かける時は身だしなみを整えおしゃれをする。
先日、同窓会の写真を見せてもらったが、断トツで若い。一人だけ年の離れた人が紛れ込んでいるようだ。
そんな母だが、視野狭窄が進み、家の中でもぶつかったり、外に一人で出るのは危なっかしい。かなり大きなテレビでドラマをみていても男女の区別くらいしかできないと言うから、相当悪いのだと思う。
母は、20年近く大正琴をしている。
高齢者施設などに慰問に行くと、入所している高齢の女性が娘のように接してくるのだと言うからおもしろい。
しかし、母は、大正琴の楽譜が見えない。
みんながみている楽譜を拡大コピーしても、それでもみえず苦労して楽譜をよんでいる。そんな母は、人前で大正琴を演奏する時は楽譜を持っていかない。
全て頭の中に叩き込み、楽譜をみなくても大丈夫なまで必死で練習をする。
目が見えないことが悪いことでも恥ずかしいことでもないけれど、母は美しくありたいのだと思う。
プライド。
しゃんと背筋を伸ばし、誰かに手を繋いでもらいながらも堂々としている。
そして、私の顔を見るたびに、髪型がどうの、アイブロウの色はチャコールグレーに変えたほうがいいだの、口紅はもっと濃いものがいいとアドバイスをくれる。
いつになっても、プライドを持って生きている母を尊敬して止まない。
※写真は、45歳ごろの母と私の長男
*カシマトモミ